日本酒の味わいに影響するものを一気にご紹介

好みの日本酒を知る編の最終回です

さて、「好みの日本酒を知る編」の最後として、日本酒の味わいに影響する要素を一気に要点のみご紹介します。今まで紹介してきたのは、下記となります。

今回の記事では、それ以外のものをご紹介します。

お米

日本酒造りに適したお米のことを酒造好適米と言います。「山田錦」や「雄町」、「五百万石」、「美山錦」といった全国的に使用される酒造好適米もあれば、各県が開発した酒造好適米もあります。福島県では「夢の香」、滋賀県では「吟吹雪」といった具合です。酒造好適米ではなく、飯米を使って日本酒を作る場合もあります。例えば、山形県の蔵では「つや姫」を使って日本酒を作っているところもあります。気になる味の違いですが、同一銘柄内のお米違いで比較するのが良いと思います。そうすると、この銘柄の「山田錦」の日本酒は米の甘みがよく出ているといった感想や、「美山錦」だと甘みが強いといった感想を持つことができると思います。

日本酒造りに使われる水を仕込み水と言います。水が軟水であるか、硬水であるかによって日本酒の味わいに影響が出てきます。ざっくりと説明すると、軟水の水で造られた日本酒は、柔らかで落ち着いた味の日本酒で、硬水だと味わいのはっきりとした日本酒になります。軟水と硬水で造られた日本酒の飲み比べをしてみるのも面白いと思います。軟水であれば、白鴻(広島)、宝剣(広島)、硬水であれば、風の森(奈良)、山形正宗(山形県)がおすすめです。

酵母

日本酒造りのアルコール発酵を担うのが酵母です。微生物である酵母が、糖をアルコールに転換します。酵母にも、日本醸造協会によって配布され、全国的に使用される「きょうかい酵母」と、各県が開発している酵母があります。酵母は、日本酒の味わいを大きく左右する要因なのですが、日本酒のラベルに記載されていないことが多く、どんな酵母が使われているか把握できないことが多いです。また、たくさんある酵母の特徴を覚えるのも難しいです。とりあえずは、日本酒のラベルに使用酵母が書かれていたら、この日本酒はこの酵母を使って作られたんだなフムフムと思えば良いと思います。酵母について、興味のある方は、下記リンクを読んでみてください。

参考URL: wikipedia 清酒酵母
参考URL: マイ日本酒探し インフィニット日本酒中級コース第6回 (酵母)

保管方法

日本酒を保管には下記のことに注意する必要があります。これらが守られていないと日本酒本来の味わいが損なわれます。

  • 日の当たらない場所に保管する(日光に弱い)
  • 冷蔵保存する(高温や温度変化に弱い)
  • 振動のないところに保管する(振動に弱い)

この中で圧倒的に問題なのは日光です。その検証を体を張ってされていた方がいるので興味のある方は下記リンクをどうぞ。

参考URL: 日落ちんレポート&日落ち・火落ち経験者が酒の常識・タブーをテキトーに考える

冷蔵保存に関しては、燗酒向きの日本酒の中には常温保存でも大丈夫なものもあります。ですが、よく分からなかったら冷蔵保存しておくのが安全です。

熟成

日本酒の飲み手の間では、その日本酒が飲み頃になっていないと判断する時、日本酒が「固い」と表現します。そんな時行われるのが、熟成です。固い日本酒を熟成させ、飲み頃に近づけることを「開かせる」と表現します。日本酒は長期間、保管しておくことで熟成していきます。保管する温度によって、熟成の進み具合や熟成のされ方が異なります。一般的に冷酒向きの日本酒は、-5度などの低温貯蔵で保管し、ゆっくりと熟成させていきます。そうすると日本酒の色もそれほど変化せず、味わいは綺麗で落ち着いたまろやかな味わいとなります。燗酒向きの日本酒は、常温で保管して(ゆっくり熟成させたい場合は冷蔵で保管して)熟成させます。そうすると、日本酒の色が黄色く変化し、味わいは濃厚になり、ナッツやカラメルのような香り(熟成香)がします。両者で見事に味わいの方向性が異なるので、そんな日本酒に出会う機会があったら、ぜひ試してみていただきたいです。

酒器

日本酒をどんな酒器で飲むかも大事な要素です。同じ日本酒でも酒器の素材や、形状によって味わいが変化するので、「これが本当に同じ日本酒なの?」と感じることと思います。ぜひご自分で試してみてください。香りが特徴の日本酒にはワイングラスなど口の大きめのグラスで、すっきりとした味わいの日本酒には口の小さめのグラスでなど、酒器にも適材適所があります。燗酒の場合も、平盃と丸いお猪口など色々な形状の酒器があるので、酒器を変えて飲み比べてみると楽しいはずです。

食べ合わせ

日本酒と一緒に食べる食事によっても日本酒の味わいは変わります。食事と日本酒が相互に引き立て合うような組み合わせ(よくマリアージュと言われます)もあれば、日本酒が食事の脇役に徹する役割をしたり(日本酒が食事の邪魔をしない、食事を引き立てると言われます)、逆に酒盗(いかの塩辛に代表される酒のつまみ)のように食べ物が日本酒の脇役に徹することもあります。私の感覚だと、日本酒はわりと食事には何でも合う、合わせやすいお酒だと思います。それでも、1つだけ注意するとすれば、和食の中でもだしが効いている優しい味のおかずに、甘みや香りの強い日本酒は合わせづらいので、そういうおかずの場合には、甘み少なめ、香り穏やかな日本酒を選ぶと良いです。そういうことも色々試して、失敗していく中で自然に気付くので、最初は固く考えずにどんどん色々な組み合わせを試してみると良いと思います。

いつ、誰と飲むか

ちょっと番外編ですが、日本酒を美味しく飲むために、結局これが一番重要な要素なのでは?と思ったりします。それが、「いつ、誰と飲むか」です。何か良いことがあった時に、気の合う友人や家族と一緒に飲む日本酒は美味しいに決まってますよね。よく日本酒を飲んでいると、「酒縁」という言葉を聞くようになると思います。その字面の通り、酒が結ぶ縁のことなのですが、私は日本酒をきっかけにして、色々な方と仲良くなることができました。居酒屋の大将、バーのマスター、居酒屋・バーの常連さん、酒屋さん、蔵元さんなどなど。私だけでなく、色々な方が日本酒を通じて、人とのつながりを広げていく様子を見ています。日本酒には人と人とを結ぶ不思議な力があるのかもしれません。

「好みの日本酒を知る編」の最後として、日本酒の味わいに影響する要素をざっくりと紹介させていただきました。またの機会のそれらを深掘りした記事を書けたらと考えています。

「好みの日本酒を知る編」の記事を通して、自分の好みは一体何なのかを把握できるくらいの知識は紹介できたかなと思います。あとは、実際に日本酒を飲み進めていくだけです。色々な種類の日本酒を味わってみましょう!

次回からは、いよいよ「日本酒居酒屋-中級編-」に入ります。