温度によって変わる呼び方
日本酒に少しでも馴染みのある方であれば、「熱燗」や「ぬる燗」といった言葉をご存知だと思います。では、「熱燗」と「ぬる燗」の違いは何でしょうか。それは温度です。下記に日本酒の温度範囲別の呼び方を並べました。
呼び方 | 読み方 | 温度範囲 | 大分類 | よく使うか |
---|---|---|---|---|
飛切燗 | とびきりかん | 55℃以上 | 燗酒 | |
熱燗 | あつかん | 50℃近辺 | 燗酒 | ○ |
上燗 | じょうかん | 45℃近辺 | 燗酒 | |
ぬる燗 | ぬるかん | 40℃近辺 | 燗酒 | ○ |
人肌燗 | ひとはだかん | 35℃近辺 | 燗酒 | |
日向燗 | ひなたかん | 30℃近辺 | 燗酒 | |
常温 | じょうおん | 20℃近辺 | 冷や | ○ |
涼冷え | すずびえ | 15℃近辺 | 冷酒 | |
花冷え | はなびえ | 10℃近辺 | 冷酒 | |
雪冷え | ゆきびえ | 5℃近辺 | 冷酒 |
よく居酒屋で「熱燗ください」といって燗酒を頼む人がいるのですが、その場合、厳密に言うと温度帯まで指定して注文をしていることになります。温かいお酒が欲しくて、温度帯はお店の方にお任せしたい場合は、「お燗ください」と注文しましょう。
もう1つ注意点は、「冷や」という用語です。「冷や」は、冷たいという漢字を使うので、冷たいお酒を想像してしまうのですが、常温と同じ意味合いです。昔は冷蔵庫などがなく、常温かお燗で飲むことが当たり前でした。お燗にしていないという意味で「冷や」と言います。紛らわしいので、用語だけ覚えておいて、普段は「常温」という言葉を使うことをおすすめします。
表の一番右に「よく使うか」という欄を設けました。そこで示した通り、居酒屋などでよく使うのは、「熱燗」、「ぬる燗」、「常温」と冷たいお酒を一括りにして「冷酒」の4つです。よって、基本的にこの4つを覚えておけば問題ないです。次点としては、「飛切燗」や「人肌燗」が使われますが、使われる機会はそれほど多くありません。

日本酒は温度によって味が変わる
同一の日本酒でも、冷酒と燗酒はもちろん、ぬる燗と熱燗でも、飲んだ印象がだいぶ変わります。一言で言うと、冷酒はまっすぐな旨さ、燗酒はじんわりほっこりとした旨さです。私は冷酒も燗酒も好きですが、飲み手の中には冷酒を好んで飲む人と、燗酒を好んで飲む人がいるので、3パターンの人がいます。実は日本酒居酒屋も、冷酒を得意としている、燗酒を得意としている、両方を得意としている居酒屋の3パターン存在します。
ベストな温度は、日本酒ごとに異なる
味噌汁は温かい方が美味しい、コーラは冷やした方が美味しい。では、日本酒はどちらが美味しいのでしょうか。残念ながら、その質問には答えられません。なぜなら、日本酒は、その日本酒ごとにベストな温度が異なるからです。さらに同じ種類の日本酒でも、飲み手の好みによって、ベストな温度は変わってきます。私にとってはぬる燗がベストな温度な日本酒でも、他の人にとっては熱燗がベストな温度かもしれません。とここまで説明すると、「結局どの温度帯で飲めばいいんだ」と混乱されるかもしれません。熱燗かぬる燗かの細かな違いは好みによる部分も大きいので判別できませんが、燗酒か冷酒のどちらで飲むべきかを判断する大まかな指針であれば、私の考えを紹介します。
蔵元が燗酒向きの日本酒を作ろうとしているか
それは、「蔵元が燗酒向きの日本酒を作ろうとしているか」です。蔵元は大まかにいって下記に分別されます。
- 冷酒向きの日本酒を作っている(例:而今)
- 基本、冷酒向きの日本酒を作っているが、一部だけ燗酒向きの日本酒を作っている(例:獺祭、獺祭 温め酒という燗酒専用の日本酒を販売しています)
- 冷酒と燗酒、どちらの温度でも飲んでもらえる日本酒を作っている(例:ロ万)
- 燗酒向きの日本酒を作っている(例:神亀)
蔵元がどんなお酒を作ろうとしているかは、公式HPやブログ、瓶のラベルの裏、酒屋HPでの紹介文などを調べると分かると思います。1,2,3は最初のうちは分かりにくいので、4の蔵元の日本酒を燗酒で飲んでみると良いでしょう。具体的には、「全量純米蔵を目指す会」の会員の蔵は、4に当たる蔵が多いと思いますので、参考にしてみてください。
参考URL: 全量純米蔵を目指す会
※ 厳密には同じ蔵元でも、冷酒向け、燗酒向け、冷酒・燗酒どちらでもOKの3パターンの酒質の設計を、スペックごとに変えていることも多いです。
とはいえ、自由に自分の飲みたい温度で飲もう
とはいえ、日本酒の飲み方は、飲み手の自由です。燗酒向きの日本酒を冷酒で飲んでもいいし、冷酒向きの日本酒を燗酒で飲んでも楽しいはずです。居酒屋でそれをやろうとすると怪訝な顔をされることもあるかもしれないので、自分の家でいろいろ試してみましょう!
次回は、純米大吟醸と純米吟醸といった特定名称酒についてご紹介します。