無濾過生原酒の長所と短所

味が濃いお酒、それが無濾過生原酒!

無濾過生原酒の特徴を一言で表すと、「味が濃い!」です。別の言い方をすると、日本酒の味がはっきりと出ます。味が濃く、美味しさが分かりやすいため、無濾過生原酒好きな飲み手も多いです。僕も日本酒を飲み始めた頃は、何を注文しようか迷ったら、無濾過生原酒と書いてあるものを注文していました。

無濾過生原酒を要素に分解してみよう

なぜ、味が濃くなるか、その疑問は、無濾過生原酒という言葉を要素に分解すると、解決します。左側に無濾過生原酒の要素、右側に対義語を載せています。

  1. 無濾過 <-> 濾過

    濾過とは、日本酒を絞った後で、細かいおりや、雑味といった余分なものを、炭などを使い取く除く作業のことです。色を透明に近づける目的もあります。この濾過を省いたものが無濾過です。濾過し過ぎると、日本酒本来の旨味や香りまで除去されてしまいます。無濾過であれば、そのような心配はいりません。その意味で、より搾りたてのお酒に近いすっぴんのお酒だと言えます。

  2. 生 <-> 火入れ

    こちらは、前回の記事で詳しく説明したので省略します。
    味を大きく左右する「生酒」と「火入れ酒」の違い

  3. 原酒 <-> 加水

    水を加えてないものを原酒、水を加えたものを加水と言います。加水には、アルコール度数を下げ、飲みやすくしたり、味わいを調整する役割があります。原酒は水を加えていないので、アルコール度数が高い傾向があり、味わいもパンチのあるものが多いです。

注意点 アルコール度数、飲み疲れ

こうしてみると、無濾過生原酒は、お酒に手をいれる工程が少なく、お酒本来の味を味わうことができ、いいことづくめではないかと思われるかもしれません。しかし、無濾過生原酒にも短所が存在します。それは、以下の2点です。

  • 原酒であることによってアルコール度数が高いこと
  • 味が濃いお酒なので、飲み疲れしてしまうこと

加水してある日本酒の場合、アルコール度数は15度くらいが多いのですが、原酒の場合、アルコール度数は17度、18度くらいあります。同じ日本酒と考えて、同じ量を飲んでいると、酔いが早く回ってしまい危険です。最近では、その問題を解決した、アルコール度数を15度くらいに抑えている原酒を作り始める蔵元も多くなってきました。加水のアルコール度数の飲みやすさと、原酒のパンチのある味わい、両方のいいところ取りをした日本酒です。

以下のURLに新政の佐藤社長による低アルコール原酒への奮闘が記載されているので、ぜひ読んでみてください。

新政 佐藤社長のブログ 日本酒のアルコール分について

もう一つの短所、飲み疲れですが、味の濃いものばかり食べているとすぐに飽きてしまう経験はないでしょうか。それと同じで味の濃い日本酒ばかりでは、飲み疲れしてしまい、あまり量を飲むことができません。日本酒を飲んでいると経験すると思うのですが、最初の一口で「最高に美味しい日本酒だ!」と思って飲み進めて、グラスの後半になってくると「あれ、やっぱりそんなことはないかな」となることもよくあります。最初の一口は最高でも、ずっと飲み続けるには適していないということもあるのです。

次回予告「日本酒は温度によって味が変わる」

先ほどの飲み疲れの例で、グラスの後半なってきて、「あれ、やっぱりそんなことはないかな」と思った理由として、味が濃いから飽きやすいという理由の他に、日本酒の温度も理由として考えられます。グラスで提供されてきた頃には、よく冷えていた日本酒が、段々常温に近づいてきて、味が変わった可能性があります。その日本酒はよく冷えていたほうが美味しい日本酒だったのかもしれません。

次回は、「日本酒は温度によって味が変わる」ことを紹介します。